モーニングバード。
頭を前後に動かしながら移動するその姿は、
とっても不自然だった。
見ないようにしよう、
とパソコンの画面に向き合ったけれど、
そのようにすればするほど、
そういうのは気になるもの。
頭はパソコンの画面に向いているけれど、
眼球だけはその動きを追いかけていたので、
きっと僕の姿も不自然なものになっていたのだろう。
そいつは僕の右横を一定のリズムで移動していた。
近づいてきたところで、
とても足が細いことに気づく。
なるほど、
この細い足では前への推進力が作り出せないんだろうな。
だから頭を前に動かして、
前のめりの姿勢をつくり、
そしてその不安定さを取り戻すように足を踏み出すことで、
こいつは前に移動しているんだな、
と分析した。
そいつは突然足をとめた。
あの移動のスピードからしたら、
絶対に通りすぎるだろう、
と予測していたので、
急停止したことに驚き、
思わず背筋が伸びた。
明らかにこっちを見ている。
ちらりと横目で見ると、
体幹と首と頭を結ぶ垂線は、
くの字に曲がっており、
移動する姿だけでなく、
立つ姿勢も不自然なんだな、
と関心しながらそいつを見返した。
「どうだ。仕事ってのは楽しいか??」
声をかけられた。
「楽しいですよ。もちろんそうじゃない時もありますけどね」
思いのほか自然な口調で返すことができた。
「そうじゃない時ってのは今のことか??
そのパソコンというやつをカチカチやっている今は本当は楽しくねーんだろ。
顔にかいてあるぞ。
楽しいと思えるところでさ、お前のその力を使えよ」
そいつはやけに尖った口をしていた。
キーボードを数回叩いたところで、
僕は手を止めた。
そして、
作業はまだ途中だったけれど、
マウスを机の上で動かし、
画面の右上でクリックした。
座っていた椅子をなんとなく机の下に戻し、
いつもより早足で廊下へと歩き出した。
そして、
重力の力を利用しながら、
落下するように階段をおりた。
「おい。見とけよ。こっちが本当の居場所だよ」
「わかってんじゃねーか」
あいつはそう言い残すと、
まるで空に飛び出したかのように、
僕の目の前からいなくなってしまった。
最後まで目を通していただきありがとうございます。
今朝の空はいつもより優しい水色だった。