「グラスホッパー」という話。

1月15日(金)~29日(金)までの2週間、

久茂地リバー沿いにありますたそかれ珈琲さんで、

言葉の展示、

「暮らす、綴る、繰り返す。」

をさせていただいています。

日々の生活で感じた事を10+αの物語にのせて展示しています。

このブログ上で、

展示している物語に副音声的解説を加えて、

1日1話づつ紹介していこうと思っています。

 

今日はその第9弾です。

(以下、展示しているお話です)

 

グラスホッパー

 

PM 7:20

 

仕事を終えて自宅へ戻ると、アパートの外階段に大きなバッタがいた。

バッタは英語で「グラスホッパー」というらしい。

その名の通り、

芝生や草原を跳びはねて移動するから、グラスホッパーなのだろうけど、

ここはアパートの外階段、アスファルトの上だよ。

 

私は思いきって声をかけた。

「こんばんは、ミスターグラスホッパー

どうして君は大自然の中じゃなくて、こんなアスファルトの上にいるの?」

バッタは黙り込んでいた。

ヒトの言葉が理解できないからなのか、

私の質問にはっとさせられたのか、

それとも本当はミスグラスホッパーだからなのか。

どんな理由なのかはわからないけれど。

 

私は続けて「ここは本当に君の居場所なの?」と聞いてみた。

やはりバッタは黙り込んでいた。

ヒトの言葉が理解できないからなのか、

確信をつかれてちょっと凹んだのか、

それとも「君」と呼ばれることに嫌気がさしたのか。

どんな理由なのかはわからないけれど。

 

バッタは黙り込んだまま私の顔をじっと見た。

そして、少し間をあけてからくるりと回転し、階段の外へと勢いよく跳びだした。

 

アパートの3階から地上を見下ろす。

私がここから飛びだしたら、きっと骨折だけでは済まされないだろうなという高さだ。

そこにバッタは着地していて、こちらを見上げて言った。

 

「俺はこうやって色々なところに飛びだせる。

君こそ、ここが本当の居場所なのかい?」

 

どうやらミスターグラスホッパーで間違っていなかったようだ。

そして彼は、口元だけで笑って、またどこかに飛びだしてしまった。

 

私もつられて口元だけで笑った。

そして玄関のドアを静かにあけて、夜の暗闇から身を隠した。

 

(以上、展示しているお話です)

 

今やっている仕事が僕は好きです。

自分がやっていることに対するプライドもあるし、

プロフェッショナルでありたいという思いもあるし、

同じ仕事をしている人たちへのリスペクトもある。

18歳で専門学校に入り、

21歳でこの仕事を初めて、

25歳で職場を変え、

今に至るこの約10年。

この仕事をやっていてよかったなーと本当に思う。

 

それは今から1年くらい前のことだったかな、

ある友人から僕の仕事にまつわることで相談を受けた。

いつも仕事をしている時のように、

友人から必要な情報を聞き、

自分の中にある知識や経験から得た色々なことを総合して、

その質問に答えた。

 

今思い返しても、

自分のやったことは間違った行動ではなかったと思う。

返答の内容も間違ってはいなかったと思う。

でも、

そういう返答をするよりも前に、

もっとやらなきゃいけないことがあったんじゃないかなと思う。

相談してきた友人が、

悩んだり困ったりしていないかとか、

精神的なストレスを抱えていないかとか、

そういう相手を気遣うような声かけがなんでできなかったんだろうって。

表面上で起こっている現象ばっかりに目を向けて、

もっと深いところに入っていかなかった自分が嫌になった。

 

今やっている仕事が僕は好きです。

でも、それを必死になって、夢中になって、一生懸命やっているうちに、

自分が思い描いている「なりたい自分」とかけはなれちゃってないかなって思う。

正直、「なりたい自分」ってどんなだよっ、

てーのもあるんだけど、

それを探すために、それを明確にするために、

次の一歩を踏みだすことを決意しました。

あの時抱いた感情が、

次の一歩を踏み出すためのエネルギーとなっているのは間違いない。

 

今やっている仕事を理解するために、

今やっている仕事から離れてみるのも必要なことかもしれないなー、

と思いながら、この物語を綴ったのでした。

 

最後まで目を通していただきありがとうございます。

 

展示10日目終了でございます。