種。
神様の仕業なのか、
はたまたこーいうのを運命というのか、
よくわからないけれど、
どこを目指すでもなく飛び出して、
広い大地のある一点に、
ふんわりと舞い降りる。
穏やかな光に包まれたり、
吹き飛ばされそうな強い風に煽られたり、
時には雨に流されそうになりながらも、
その殻を破る日を夢みて、
1日1日を、
なんとなーく過ごし、
それでも見えない土の下ではあちらこちらに根を伸ばして、
ついにと言うほど誰かに期待されていたわけでもなく、
やっとと言うほど耐え忍んだわけでもなく、
芽を出す。
ここから先のことは不確かで、
多くの生命に喜びを与える美しい花だったか、
その存在に気づかれないくらいひっそりと暮らす草だったか、
大地にしっかりと腰を下ろした大きな木だったか、
悪気はないのに周りからは煙たがられる毒を含んだ果実だったか、
何だったのかはっきりと覚えていないんだけれど、
ゆっくりと、
確実に成長していたということは記憶している。
ここから先のことは覚えていて、
そして、
生命の歴史から見れば短い年月、
動物の命から見れば長い年月が過ぎた頃、
まるでこれが最後の仕事だと言わんばかりに、
空に向かって優しく解き放つ。
神様の仕業なのか、
はたまたこーいうのを運命というのか、
よくわからないけれど、
どこを目指すでもなく飛び出して、
広い大地のある一点に、
ふんわりと舞い降りた。
それが僕だよ。
最後まで目をとおしていただきありがとうございます。
さぁ、
どんな芽を出して、
どんな風に成長して、
どんな種を遺すことができるのだろうか。