「ランチタイムブルース」という話。

1月15日(金)~29日(金)までの2週間、

久茂地リバー沿いにありますたそかれ珈琲さんで、

言葉の展示、

「暮らす、綴る、繰り返す。」

をさせていただいています。

日々の生活で感じた事を10+αの物語にのせて展示しています。

このブログ上で、

展示している物語に副音声的解説を加えて、

1日1話づつ紹介していこうと思っています。

 

今日はその第5弾です。

(以下、展示しているお話です)

 

「ランチタイムブルース」

 

PM 0:15

 

人間が食事をしている姿はとても美しいと思います。

色鮮やかに盛り付けられた食物を、

箸やスプーン、ナイフとフォークなどの道具を駆使して口元に運ぶその姿は、

身体機能的にも、文化的にも、動物の進化の最高傑作なのではないかと思います。

 

僕は飛行機での機内食が苦手です。

英語でのやりとりに自信がないから、というのもありますが、

これと言ってお腹がすいたというわけでもないのに、

決められた時間に食事が配膳され、

断ってしまうと万が一お腹がすきはじめた時に困る、といった程度の理由で、

黙々と食物を口元へ運んでいくその姿が、なんだか滑稽に思えるからです。

 

僕は仕事場での昼食の時間も苦手です。

集団の中で会話をすることに自信がないから、というのもありますが、

さっきまで一生懸命汗を流して仕事をしていたのに、

お腹がすいたからという理由ではなく、時間がきたからという理由で、

我先にと食物を口元へ運んでいくその姿が、なんだか滑稽に思えるからです。

 

午前中の仕事を終え、ゆっくりと昼食を食べ始めました。

僕の左隣にはテレビがあって、お笑い芸人が健康食品の紹介をしています。

こういった内容にはまだ関心がないので、

音は耳に届いていますが、脳までは届いていません。

右隣には男の先輩がいて、「ご飯を食べる時にスポーツドリンクはないでしょ」と、

タンブラーを片手に持論を展開しています。

その向かい側には女の先輩がいて、「わかるー」と共感のフレーズを口にしています。

本当に共感しているのかはわかりませんが、

相手の意見を否定せず、しっかり受け止めてあげるあたりはさすが人生の先輩。

見習いたいなと思います。

僕の前には同僚の女の子がいて、先輩達の話を聞いています。

動物や花に声をかけちゃうような少し不思議な子で、

感情があまり表情に出ないタイプ。

先輩の前でも自分のスタイルを貫いているあたり、さすがだなと思います。

 

こんな光景をじっくり眺めているのが好きです。

 

こうやって隣にあの人がいて、

こんな話をしているこの時間が、

もうそんなに長くはないということを知ってしまったので。

 

(以上、展示しているお話です)

 

ふとした時に、

この時間が一生続いたらいいのになー、

なんて思うことがある。

でも、それを後で振り返ってみると、

何をやっていたのか、何を話していたのかほとんど覚えていない、

ということが多い。

正確には、覚えていないというより、説明できないというほうが正しいだろうか。

 

僕は間もなく今住んでいるこの土地を離れる。

それが決まってから、

よりいっそうこういう感情を抱くようになった。

 

次にやりたいことの方向性が定まって、

この土地を離れることが正式に決定してから、

今やるべきこと、今だからできることってーのが明確になったので、

何をやるにもいい意味で吹っ切れた感がある。

距離を知らされないまま長距離走をスタートしちゃたから、

どんなペース配分で走り続けたらいいのかわからなっかたし、

いつまでこれが続くんだろうという不安もあったけど、

ゴールテープが見えたおかげで、

自分にはこれくらい余力が残っている、

だとしたらあの辺りからスパートをかけられそうだとか、

あと少しだから燃え尽きてもかまわないとか、

そういう吹っ切れた感じ。

(実際は長距離走ったことないけどねー)

今やっていることの「終わり」を設定したことが、

いい方向にはたらいているなと思っている。

 

その一方で、

今やっていることの「終わり」が見えてしまったことで、

何をやっても、何を話しても、

その物事の端々に寂しいっていう感覚が付随してしまうようになった。

こうやってみんなと遊ぶのあと何回あるかなーとか、

この人と仕事するのはあと何日なんだなーとか。 

 

この時間が永遠に続かないことは知っているけど、

この時間が少しでも長く続いてほしーなと思う。

たとえ毎日同じ光景のランチタイムであったとしても。 

 

何やかんや説明してみましたけど、

よーするに、

悲しいんじゃなくて寂しいだけさっ、

と自分の中の森山直太朗的な部分と向き合いながらこの物語を綴ったのでした。

 

この物語を読んでくれた皆さんがそれぞれ何か感じていただけたら嬉しーけど、

この物語に関しては、

いつも遊んでもらっている人たちに何かメッセージを伝えられたらなー、

という想いをやんわり含ませたつもりなので、

それが伝わったら嬉しーです。

 

最後まで目を通していただきありがとうございます。

 

展示6日目終了でございます。