「たそかれ」という話。
1月15日(金)~29日(金)までの2週間、
久茂地リバー沿いにありますたそかれ珈琲さんで、
言葉の展示、
「暮らす、綴る、繰り返す。」
をさせていただいています。
日々の生活で感じた事を10+αの物語にのせて展示しています。
このブログ上で、
展示している物語に副音声的解説を加えて、
1日1話づつ紹介していこうと思っています。
今日はその第7弾です。
(以下、展示しているお話です)
「たそかれ」
PM 3:25
久しぶりの休日だからどこか出かけようよと、昼寝をしていた彼をたたき起こす。
珍しく早起きなんかするから昼間寝ちゃうんだよ、
と文句を言おうと思ったけれど、
黙っておいたほうがスムーズに物事が運ぶ、
ということを私は過去の経験から知っている。
彼は思いのほかすんなりと起きて、私を珈琲屋さんにつれてきてくれた。
店内をぐるりと見渡す。
店主が1人と、
カウンターに男の人が1人、
隣のソファーに女の人が1人。
壁には物語なのかメモなのか、いくつかの文章が置かれているけれど、
勝手に触れていいものなのかわからず、また店内をぐるりと見渡す。
彼は珈琲を、私はカプチーノを頼んだ。
待っている間、彼が初めてこのお店に来た時のことを話してくれた。
家以外で本を読める場所をフラフラと探していたら、このお店に辿りついたらしい。
その時は1つのテーマをもとに撮影された写真がいくつも壁に飾られていて、
今の店内とは少し印象が違ったみたいだ。
奥の席に座り、本を読みながら珈琲を飲んでいたら、
「どの写真が1番好きですか?」って店主に聞かれたので、
自分が思い浮かべた画と1番かけ離れている写真を選んだらしい。
運ばれてきたカプチーノを飲みながら、
「そのテーマを聞いてあなたは何を思い浮かべたの?」と聞いたら、
誰かに声をかけられたけど、顔がはっきり見えなくて誰なのかわからない、
という画が思い浮かんだらしい。
私にはその画とテーマを結び付けることができなかったし、
自分の思い浮かべた画と1番かけ離れている写真を選ぶ理由もわからなかった。
だけど、
彼がいつもより饒舌に話し続けていたので、何も言わずに窓の外へと目を向けた。
窓の外では人や車が道路を行き交い、
傾き始めた太陽が、建ち並ぶビルの群れに影をつくりはじめていた。
(以上、展示しているお話です)
これは言わずもがなですが、
たそかれ珈琲さんに初めて訪れた時のこと、
が物語のベースになっています。
自宅以外でどこか読書のできる場所はないだろーか、
とずっと探していて、
たしか美容院に行った帰りだったかな、
車で久茂地リバー沿いを走っていた時に見つけたんです。
たまたま。
その当時は僕は珈琲はあまり好きではなくて、
どちらかというと紅茶が好きだったのですが、
なんだかその時は、
ここの店に入っておいたほうがいい、
というような感覚になって、
本を1冊持って、1人でお店に行きました。
その時は「たそかれ」をテーマにした写真が、
お店の白い壁にいくつか飾られていました。
(その数年後、自分がその壁に展示をするとはこの時はまだ知る由もない・・・)
奥のソファー席に座り、
特に会話もせずに、
本を満足いくところまで読み込みつつ、
壁に飾られた写真をぼんやりと眺めていました。
珈琲を飲み終え、
(たしかこの時はミルク使ってたんじゃないかなー、もしくはカフェラテだったか)
お会計のために移動すると、
「どの写真が好きですか?」と。
「たそかれ」という言葉は、
黄昏=夕焼け、夕暮れ時とかを表しているけど、
夕焼けで薄暗くて誰なのか顔がはっきりわからない=誰そ彼、
が由来である、ということをうすーく知っていたので、
(間違えてたらごめーんね)
もし僕が「たそかれ」をテーマに写真を撮ったりするとしたら、
夕日をバックにして顔が影になっちゃっている人、
っていう画を思い浮かべるなーと思っていて。
でも、
そういった写真はその時展示されていたものの中にはなくて。
(見落としていたらごめんなさい)
っで、
自分の想像の範疇にないものは新鮮で面白いから、
否定するよりも積極的に認めた方がいいんじゃないか、
という持論から、
自分の思い浮かべた画と1番かけ離れている写真を選びました。
ヒトは誰しも、「共感してほしい」と思うものではないでしょーか。
自分が好きなモノ、情熱を注いでいるモノを、
否定されたり、批判されたり、関心を抱いてもらえないと、
悲しい気持ちになりますよね。
それなのに、
自分の理解できないモノや、自分の考えと異なるモノは、
無視してしまったり、嫌いになってしまうこと、
少なからずあるんじゃないでしょーか。
自分のことは好きになってもらいたいのに、
他人のことを好きになる努力はしないって、
ずるくない。
やっぱり、
自分のことを好きになってもらいたかったら、
他人のことを理解することからはじめたらいいんじゃないかなー、
と思いながら、この物語を綴ったのでした。
僕の綴った物語を否定するのではなく、
疑問を抱く、というような優しい気持ちで読んでいただけたら嬉しーです。
最後まで目を通していただきありがとうございます。
展示8日目終了でございます。